扇子と病気
梅雨に入いりましたが、雨が降らない日は本当に暑いですね。
まさしく初夏の陽ざしがさんさんと降り注ぐ感じになります。
私はこの季節に必ず買うものがありますが、それは「扇子」です。
それもなぜか必ず丸善に行って購入するのです。
私には一生買えそうもない高級万年筆や時計が入った陳列ケースを横目でみながら、扇子コーナーに歩み寄るときが、「さあ、今年も夏がやってくるぞ」と思う瞬間なのです。
去年は薄ねずみ色の地に、江戸時代の日本地図が描かれたものを買いました。
その時期は、引っ越しを控えて何となく落ち着かない気分で過ごしていたはずです。
おもしろいものでそんな気分のときは、やはりはっきりしないねずみ色を選ぶのです。
また、地図を広げて物件探しを始めていたので、描かれた柄も地図だったのかもしれません。
毎年、その時期の心の持ちようが、選ぶ扇子に表れるようでなんだか不思議です。
さあ、今年もそろそろ丸善に行きますよ。
今年はいったいどんな色でどんな柄になるのでしょう。
ところで、不思議なことに毎年買っているはずの扇子なのに、手元には一本もありません。
私は、ほめられるとすぐ人にあげてしまう癖があり、サイズがある洋服や靴と違い、誰でも使える扇子などの小物は特に要注意なのです。
いくらお人好しの私でも盛夏の季節にはしっかり自分で使いますが、秋口がとくに危険です。
「あら、すてきな柄ね。いい色ね。」なんてほめられたらもう嬉しくて、「こんなのでよかったら差し上げます。私はもう今年使いませんので。」なんて口が勝手にまわっています。
その昔、PTAの集まりで着ていたジャケットをほめられて、「ちょっと私にもはおらせて」なんて言われて貸してあげたら、その方があまりにも似合うので、結局さしあげて寒さに震えながら帰ったこともあります。
私の友人は、もうほとんど病気だと言っています。
「あなたの、ほめられたら何でもどうぞ、は、もう重症よ。だって、自分のダンナまで人にさし上げちゃったんだから。」
どうかみなさん、私の持ち物をほめないでください。お願いします。
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